2007.03.26

無知の涙

20070326

永山則夫著『無知の涙』を読む。
永山則夫といえば誰もが知っているであろう連続射殺事件の犯行者であり、新日本文学賞を受賞した作家でもある。

この獄中で記された『無知の涙』を読むと、永山が獄中でどのように自己と向き合い、自答し、そして何を見い出していったのかがよくわかる。
それはあとがきにも書かれているように、事件の犯行者という先入観もっては『無知の涙』の真意に触れることはできないだろうと思う。でも『無知の涙』を読み進めていけば、おのずとそれが犯行者の自己弁明でないことくらいはわかるだろう、とも思う。

しかしながら、この『無知の涙』の自己を掘り下げ、新たな地平を切り開いていく姿には、ある作家のあり方が示されているようにも思う。
だからと言って、そのあり方が理想ということではないけれど、少なくともそのような「探求」や「追求」とでもいえる態度があってしかるべきだろう、と思ってしまう。そして、僕はあらためて自身の作家としてのあり方を問われているようにも感じた。

これは余談ではあるけれど、『無知の涙』の最後、ノート10の章には赤瀬川原平の「千円札裁判」に触れながらオブジェについて書かれている箇所があったり、マルセル・デュシャンの『泉』やハイレッド・センター、最後には芸術そのものへの言及もある。

まだ読んだ事のない方で興味がある方がいましたらいかがでしょうか?
僕は読むのが遅くてだいぶ時間がかかったけれど、また少しずつ読み直してみようかと思っています。