展示室を訪れると、そこには黄褐色を帯びた一枚の膜。
床と同サイズのそれは水平に、手を伸ばせば届きそうな高さに設置されていた。
さまざまに形容しようと思えば出来たように思う。
けれどもそれは余計な事に思えた。
それは、ただ、そこに、あった。
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作品を見るために、展示室を訪れる、
という状況でなければ、そう思わなかったかもしれない。
では、そうでなければどう思ったのだろうか、と自問してみる。
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やじろべえが依って立つ起点。
バランスなんてどうでもいい。
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太さの異なる糸で編まれた、網目のまばらな一枚の膜。
その状態を保つのか、揺れ続けるのか、それとも捨てるのか。