2006.10.19

多摩川の畔に佇む沈黙の森

art & river bankで開催中の『泉沢儒花/沈黙の森』展に行く。
同ギャラリーに行った目的は他にもあったんだけど、それは置いといて、泉沢さんの展示を見て思った事をいくつか。

泉沢さんの展示はこれまで何度か見させてもらったけれど、今回の展示はこれまでのものとは何だか印象が違う。
展示されている作品たちは泉沢さんらしいと感じるものもある。けれど決定的に違うと思ったのは、その展示スタイル。

これまでの展示では展示空間/環境をあまり意識していると感じることはなかったけれど、今回の展示では展示空間/環境と対話しようと、より積極的にアプローチを試みているように見える。
そして、そんな展示をしばらく眺めていると、環境の変化とともに展示の印象もゆっくりと変化し、時にはまったく違った印象を僕に抱かせる。
もちろん、それはriver bankの立地条件があっての事だし、僕がそのように見てしまうだけなのかもしれないけれど、でも、僕はそのような展示にある可能性を感じてしまう。

環境に抵抗するのではなくどこまでも寄り添いながら、時に対話をするように佇むそのような展示は、とても静かでゆっくりと流れる川のようでもある。そして、それを見る人は、時にその流れに身を任せる事を誘われ、同時にその流れに身を任せなくてもよいことを許される。
そして僕はそのような展示に「あらゆる見方を許容する広がり」と、マッチョな作品にある「弱さを隠すための強さ」とは正反対の「強さ」を見ながら、そこには冷たくも暖かい、とても豊かな眼差しを開く契機があるんじゃないかと感じている。

多摩川の畔に佇む沈黙の森は、静かな流れに身を任せながら、次の何かへ向けて漂っているようでもあった。