Masaki Kawada Web

一冊の栞 no.14

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芸術とは、創造である。
芸術を顕し、芸術を覆い隠すことが芸術の目標である。
批評は美なるものを、別個の様式もしくはあらたな素材に移しかえる。
批評の最高にして最低の形態は自叙伝にほかならぬ。
美なるものに意味を見いだすのは、好ましからざる墜落であり、それはあやまれる行為である。
美なるものに美しき意味を見いだすのは人である。
美なるものがただ「美」をのみ意味しうる。
道徳的な書物とか非道徳的な書物といったものは存在しない。書物は巧みに書かれているか、巧みに書かれていないか、そのどちらかである。ただそれだけでしかない。
リアリズムにたいする嫌悪は、鏡に映った自分の顔を見るときの怒りと異なるところがない。
ロマンティズムにたいする嫌悪は、鏡に自分の顔が映っていないといって怒るそのままである。
人の生活が芸術の扱う主題の一部を形成してはいる、が、芸術は、不完全を完全な方法によって処理することにこそ存在する。芸術たるものは証明せんとする意欲をもたない。いかなることも、真なることさえ証明されうるのだ。
芸術たるものは道徳的な共感をしない。芸術 の道徳的共感は赦すべからざるスタイル上のマンネリズムである。
芸術たるものはけっして病的でない。芸術はあらゆることを表現しうるのだ。
思想も言語も芸術にとっては芸術の道具にほかならぬ。
善も悪も芸術家にとっては芸術の素材にすぎぬ。
芸術と名のつくものはすべて、形式の点より見れば音楽を典型とし、感情の点よりすれば 俳優の演技をその典型とするべきである。
すべて芸術は表面的であり、しかも象徴的で ある。
表面より下に至らんとするものは、危険を覚悟すべきである。
象徴を読みとろうとするものは、危険を覚悟すべきである。
芸術が映しだすものは、人そのものではない。
或る芸術作品に関する意見がまちまちであることは、とりもなおさず、その作品が斬新かつ複雑で、生命力に溢れていることを意味している。
批評が一致しないとき、芸術はまさしくおのれ自身と調和している。
有用なものを造ることは、その作者がそのものを賛美しないかぎりにおいて赦される。無用なものを創ることは、本人がそれを熱烈に賛美するかぎりにおいてのみ赦される。
すべて芸術はまったく無用である。

2004年 / h.15.1 × w.10.9 × d.1.5 cm / 本 水彩 / 作家蔵