Masaki Kawada Web

Untitled

雨が降る中、ベランダ越しに見る景色は窓ガラスについた雨粒で揺らいでいた。傘をさす人たち、過ぎゆく車、庭の草木。輪郭は雨の中でぼやけながらも、雨粒の跳ね返りがそれらの存在を確かにもしていた。

右手で左手をつかむ。左手は右手につかまれた。つかみ、つかまれ、つかむこと。右手と左手に起きたことを同時に感じることはできるだろうか。

意味や理由はないのかもしれない。ただそれを描くと決断されただけ。決断の連続。幾重にも織り込まれた決断。何のために描かれたのかわからなくてもかまわない。むしろそのように描かれたことの必然性が感じられることが大切なのだ。

自分のことについて「僕はこういう人だと思う」と友人に話してみてもいつも違うと言われる。僕は友人にどう見えているのか。僕が思う僕と友人が思う僕。今度、友人が思う僕を演じてみよう。

しかるべき場所に、寄り添いながら、普通のこととして、時には部屋の模様替えのように、ほかの場所でもよかったのだけれど、偶然を含めて、置いてみる。

『河田政樹キュレーション 「小林丈人展 二回転半ドロップ」』 / ゲルオルタナ / テキスト / 2013年