Masaki Kawada Web

実生の庭、星座の輪郭

あまり手を入れず、半ば植物の育つがまま、なるがままに任せている自宅の庭。葉と葉は触れ合い、枝は重なり、所々に深い影を落とす。最近は苗木を買って植えることが少なくなったから、このぼうぼうさ加減は新たな種が自然に蒔かれた、運ばれてきたということだろう。庭の半分は植木鉢や買ってきた苗木が育った厚み、残りの半分は自然に育った実生の厚み。

夜、空を見上げてみればそこには満天の星。星座に詳しい人なら、そこにさまざまな星座を見る事ができるのだろう。星座にうとい僕にはただ輝く星々が見えるだけ。星座は見えない。星のひとつひとつを紙に写し取ってみてもただの点になってしまう。でも、今、僕に届いている輝きにはきっと奥行きがあるはず。星座を横から見たらどう見えるのか。星座の輪郭を想像してみる。

種から育てる実生のように作品をつくり、そこからまた種を採取して新たな作品をつくる。庭に蒔かれた種の芽生えを見守るように、作品を展示する事の中でも実生の現れを待つ。そして、それら作品や実生の現れを含めて、移り行く事象を注意深く観察し、眺める。もし、そこに見えている事象そのままに別の事象が重なって見える時があるとしたら、それは想像するしかなかった星座の輪郭が星々の輝きの中に見える時なのかも知れない。

『実生の庭、星座の輪郭』 / GALLERY CAPTION / コメント / 2012年