Masaki Kawada Web

オールド/ニュー準備室 vol.4

「メモ」より(記録年月不明)

正直に告白しようと思いますが、「Documents-old/new-」のための公開制作と銘打って「オールド/ニュー準備室」を始めてみたものの、制作は順調とは言えず、かわだ新書「アートする美術」の自筆年譜にも書いたのですが、美術作家・河田政樹のその第一期を勝手に終了させてしまった手前、これまでの美術作家の営みを裏切っていかなくてはいけないと思いながらも、「アートする美術」の執筆に要した約一年間の沈黙が美術作家としての思考を鈍らせたらしく、何をしても駄目に思え、第一期にあったあの勢いはどこへ行ってしまったのかと思いながらも、それでも記録写真「名なし」は撮り続け、増え続けるその厚みが僕を圧迫し、「一冊の栞」と題した作品の制作は続けていこうと思ながら文庫本(小説)を読んではみるものの、気付けば小説を楽しんでいる僕がいて、それも制作の一部ではあるものの、単に本を読んでいるにすぎないわけで、ただただ平凡な日々が続き、僕以外誰もいないアトリエで、漠然とした風景を眺めながら、どこに焦点をあてるわけでもなく、長い独り言を言っている、それ自体は閉じられたものでしかないけれども、僕がこれまで制作と受け取られないことを制作と捉え、どこか抑制していた事が、ここにきて吹きだしてきた感があり、制作と捉えられないだろうことを制作ヘ向けて本格的に捉え始めたと言ってもいいのですが、それも「制作へ向けて」という立て前をつくることで、事実を歪曲している感も否めず、そうすると結局、宙に浮いたような、ただただ平凡な日々が続くのですが、そんな日々を過ごしていると「新たな発見」というような目新しさよりも、そのような新たな発見が「はじめからそうであったことに気付くことでしかない」とも思えてくるのです。

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『オールド/ニュー準備室 2002年8月31日号 vol.4』 / かわだ新書プロジェクトホームページ / 2002年