Masaki Kawada Web

はぐらかし

僕は美術作家としての側面をもっているから、必然的に美術という場所にも立っている。
といっても、別の顔があるわけじゃないから、周りから見れば、美術作家そのものに見えるだろうと思う。
けれども、結局、僕は美術に片足を突っ込んでいるだけにすぎないとも思う。どこかで「美術なんて知らなくても関係ないわ」なんて思っているし、そう思いながらも辛辣に美術について考えてみたりもする。
だから、僕は積極的に「美術をしています」と周りの人には言わないことにしている。むしろ「関わっています」なんて言い方をよくする。

もちろん、僕は美術作家として美術に関わっているのだから、それは間違いではない。けれども、他の関わり方もあって当然だろうし、むしろ僕は美術作家として関わることと同じように、美術ファンとして、そして美術とは無関係な人として美術に接している。
その上で、僕は「美術に関わっています」と言うのだけれども、他人にはいまいち伝わっていないようでもある。

僕も敢えてそれを強調しようとは思わないからそれでいいのだけれど、僕のつくっている作品にもどこかそんな「美術に関わっています」という雰囲気が漂っているのかもしれないと思う。

「関わり方は人それぞれ、その時、その場所で変わるもの。」

僕は作品をつくることに対してもそんな風に関わっている。そして、そんな関わりの中でつくられた作品は、どこかつくり手である僕をはぐらかしているようでもある。

『アートする美術』(かわだ新書001) / 2002年 / pp.66-67