Masaki Kawada Web

遠方に/アートする美術覚書き

果たして「美術とは何か?」という問いに対して、どれくらいの人が答えることができるだろうか。
言葉を詰まらせる人、他の話題にすり替え答えを濁す人、雄弁に美術とは何かと語る人・・・・・。けれども、それら答えが、依然、身近な存在、近くにいる聞き手にしか届かないものであるならば、それは限りなく沈黙に近い語り、言葉でしかない。
もしそうであるならば、僕たちは、そのような沈黙、言葉ではなく、より語ることとして、また、身近な存在よりも、遠方にいる、名づけられながらも無名に近い存在に向けて語る必要がある。
そして、僕たちはそのような語りによって、「美術とは何か?」という問いに対する答えを導き出し、同時に、美術それ自体を常に捉え直していかなければならない。

(「遠方に/アートする美術覚書き」より)

『アートする美術』(かわだ新書001) / 2002年 / カバー