Masaki Kawada Web

あなたの印象に残っている「風景」についてお話ください

このように「印象に残っている風景は?」と、聞かれると、私には他の人に言うほどの印象に残っている風景がないので、それらの風景を思い出し語ることに何かを見出すことができません。
それでも敢えて印象に残っている風景、特に風景について語るとすれば、このように言葉を使い、文章を書き、読み返すその営みの中に現れては消える「それ」を風景と呼んでも良いと考えています。
ただ、「それ」は印象に残る風景とは異なるものだと思っているので、印象に残っている風景について考えると、私の中にはあまりに多くの貧弱でありきたりな風景しか残っていないことに、そして、そのような風景しか残っていないにもかかわらず、忘れていった数多くの風景があることに、自らの鈍感な神経や怠惰な態度を疑い、反省します。

2000年1月11日

『エル・アール』 / 17号 / 2000年 / p.106